犬にかかりやすい病気「胆嚢粘液嚢腫」
2024/08/10/
こんにちは、有明動物病院です。
今回は犬の胆嚢粘液嚢腫についてお話させていただきます。
犬の胆嚢粘液嚢腫の病態
胆嚢とは肝臓で生産された胆汁という消化液を一時的に貯蔵する臓器です。食べ物が十二指腸に入ると胆嚢中の胆汁は総胆管を通り、十二指腸に分泌されます。
胆嚢粘液嚢腫とは胆嚢内に粘液や濃縮した胆汁が過剰に蓄積して胆嚢拡張を認める疾患です。
明確な発症要因は解明されていませんが、胆汁の流れが悪くなり、胆汁の再吸収と粘液の過剰産生が起こるためと考えられています。特定犬種(シェットランドシープドッグ、ミニチュアシュナウザー、アメリカンコッカースパニエル、ポメラニアン、チワワ)に多いとされ、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、脂質代謝異常に合併することがあります。
犬の胆嚢粘液嚢腫の症状
初期段階では無症状ですが、進行すると嘔吐、食欲低下、活動性の低下などを認め、胆管閉塞や胆嚢破裂などを起こし重篤化すると黄疸、食欲廃絶、虚脱、発熱、腹痛などを認め生命に関わります。症状を発現した犬の手術例では胆嚢炎、胆嚢壁の壊死、胆管炎や胆管肝炎の合併が高率に認められます。
犬の胆嚢粘液嚢腫の診断
血液検査や超音波検査などを併せ、総合的に診断します。血液検査では多くの場合、肝酵素上昇を認めます。胆嚢炎、胆管炎、胆管閉塞などを合併している場合、白血球数の増加、炎症マーカーの上昇、黄疸などを認めることがあります。超音波検査では、特徴的な所見が認められます。
犬の胆嚢粘液嚢腫の治療
わんちゃんにおける胆嚢疾患はヒトの重度胆嚢炎症例と同程度ものが散見され、合併症も多いために年齢や症状の程度、併発疾患などを加味した上で治療方法を検討いたします。
胆嚢摘出術の合併症としては、感染・癒合不全・胆嚢摘出後症候群(肝酵素上昇・黄疸・消化器障害等)・ 炎症波及(呼吸器障害・肝障害・膵炎・播種性血管内凝固症候群)等があげられます。 胆嚢炎、胆管炎、胆管閉塞、胆嚢破裂など重篤な病気を合併している場合は、入院による集中治療や胆嚢摘出手術が必要となります。黄疸などの肝不全徴候を呈している場合は、内科治療で症状を改善した後に手術を実施した方が術後の生存率が良いとされています。
保存治療(内科治療)を選択した場合は、経過観察、食事療法、投薬治療などを実施し、定期的な検査をします。
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